家を手放さずに資金を得る──2つの方法
「家はあるけど、お金がない」
そんな高齢者の悩みに対応する方法として、近年再注目されているのが、
「リバースモーゲージ」と「セール&リースバック」という2つの仕組みです。
◆リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借り、亡くなった後に売却して返済するという仕組みです。
借りている間は利息のみを支払い、元金は死後に清算されるため、自宅に住み続けながら老後資金を得られるというのが特徴です。
長年制度自体は存在していましたが、実際に取り扱える金融機関が少なく、制度が整っていないため利用は限定的でした。
しかし近年では、対応できる一部の銀行や専門事業者が現れ、徐々に選択肢が広がっています。
ただし、利用にはさまざまな条件(年齢・物件の評価・家族構成など)があるため、使いたいときに使えない可能性もある点に注意が必要です。
◆セール&リースバックとは?
もうひとつの選択肢が「セール&リースバック」です。
これは、自宅を一度売却し、その後“家賃を払って同じ家に住み続ける”という方法です。
たとえば、一人暮らしのおばあちゃんが年金だけでは生活が苦しく、近い将来老人ホームへの入居を考えている。
しかし、「もう少し今の家で過ごしたい」と思っているとき――
この制度を使えば、自宅を売却してまとまった資金を確保しつつ、しばらくは住み続けることが可能です。
そして、いよいよ老人ホームに入居する時が来れば、引き受けた不動産会社が家を再活用したり売却したりするという流れになります。
重要なのは、本人が安心して「次のステップ」に備えられること。
住み慣れた家で過ごしながら、老後の準備を着実に進めることができるという点が、この制度の大きな魅力です。
不動産終活、“その時”では遅い理由
多くの人は「不動産の終活」という言葉を聞くと、「そろそろ人生の後半だから、そろそろ整理を…」と、
リタイア後や介護が視野に入った頃から始めようと考えます。
ですが、その頃には子どもたちはすでに独立し、親との物理的・心理的距離も大きくなっていることが多く、
「今さら話し合ってももめるだけだろう」と、話し合いを避けてしまう傾向が見られます。
しかし、そうした先延ばしが結果として「何も決まらないまま相続が発生する」原因になります。
そして、残された家族がその場で悩み、もめごとに発展する――
これが、いわゆる“争続”の温床となるのです。
では、いつから不動産の終活を始めるのが理想なのでしょうか?
私の考えでは、できるだけ早い段階から、家族との話し合いをスタートすることが重要です。
それも、お父さんがまだ現役で、リーダーシップを発揮できるうちに。
本人の判断力がしっかりしている時期であれば、不動産の状況を自ら説明でき、
家族との対話もしやすく、「家をどうするか」という会話の土台が整います。
不動産の終活とは、単なる資産整理ではありません。
それは、将来の生活設計や家族の安心を考える“人生設計の一部”でもあります。
「住みながら資金をつくる」
「早めに子どもと話す環境を整える」
そんな“今できること”から、終活は始められるのです。