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【代表コラムvol.12】・家族信託が“争続”を防ぐ鍵に

2025.05.20

「まだらボケ」の父を前に、あなたが考えるべき選択肢

 

 

あるご家庭で、高齢のお父さんが所有する複数の不動産について、将来の相続や管理をどうするかという話題が出たときのことです。

お父さんは最近、日によって判断がはっきりしない状態になることがあり、医師からは「いわゆるまだらボケの状態」と診断されました。

 

この先、病状の回復は見込めず、悪化していく可能性が高い状況です。

そんなとき、家族が最初に検討するのが成年後見制度ではないでしょうか。

 

成年後見制度は、本人の財産を守る目的で裁判所が選任する後見人が、資産を管理する制度です。

後見人には、親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士などがなることができます。

 

しかしこの制度には、大きな制約があります。

不動産の売却には裁判所の許可が必要

銀行から新たな借入をすることは原則として不可

資産を減らす行為(リフォーム、投資、不動産購入など)は制限される

 

つまり、資産の保全には適していても、有効活用には向いていないという側面があります。

 

たとえば、不動産を売却する絶好のタイミングを逃したり、節税目的の賃貸物件購入ができなかったりと、本人にとって結果的に損”になる可能性があるのです。

 

このような背景から、近年注目されているのが「家族信託(民事信託)」という制度です。

 


 

財産を“守りながら動かす”ための家族信託という選択

 

家族信託とは、資産を信頼できる家族に託す契約です。

不動産の所有者(たとえばお父さん)が、長男などの家族に不動産の管理や処分を任せる契約を結び、そのうえで不動産の名義(登記)をその家族に移すことができます。

 

ただし、注意が必要なのは、不動産の名義が変わっても「利益」はお父さんのままであるということ。

 

この関係性を整理すると以下のようになります:

委託者:お父さん(財産を託す人)

受託者:長男(管理・処分を任される人)

受益者:お父さん(不動産から得られる利益を受け取る人)

 

この仕組みによって、長男は不動産を管理しながら、必要に応じて売却や賃貸、ローンの組成といった柔軟な資産活用が可能になります。

相続税対策も、生前から実行できるようになるため、将来の相続に備えた現実的な一手となります。

 

また、家族信託の契約にあたっては、家族での話し合いが不可欠です。

すべての相続人の同意は法律上必要ではありませんが、信託を実行するうえで相続人とのコンセンサス(共通認識)を形成することが重要です。

 

この「話し合いのきっかけ」こそが、家族信託の大きな副次効果です。

 

財産の継承について、生前にきちんと話し合い、納得し合っておけば――

「争続」と呼ばれる骨肉の争いが、将来起こるリスクを大きく減らすことができます。

 

そして何より重要なのは、お父さんに正常な意思能力があるうちにこの話し合いと契約を済ませることです。

判断能力が失われてしまったあとでは、信託契約を結ぶことも、財産の自由な管理もできなくなってしまいます。

家族信託は、単なる法的制度ではありません。

それは、家族の信頼を土台にした柔軟な資産承継の手段であり、

本人の意思と家族の将来をつなぐ「架け橋」ともいえる存在です。

 

「何かを始めるには、きっかけが必要」と言いますが、

家族信託こそが、不動産終活の第一歩となるきっかけになるかもしれません。

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